2022年9月、カナダ生活1ヶ月目。

旅行ではなく「住む場所」として日本を出たのはこれが初めて。留学費用を支払ってから田舎に家を購入したこともあり、自分で決断したにも関わらずかなり腰が重く、いろんなことを理由に出国をできるだけ遅らせた。友人や家族から激励されては号泣を繰り返し、着いてからも寂しくて毎日泣いていた。

カナダに到着して最初の週末、行きたかった「バンクーバー周辺のフライショップリスト」1つめのHigh Water Tackleを訪れた。事前の下調べで見た数年前のブログ記事に「North Vancouverに日本人がいる釣具屋がある」という記載を見つけて、とにかく安心するために最初に行こうと決めていた。

行くと、Mattさんという日本人が迎えてくれ、「フライフィッシングするの?!日本人で?!女子一人で来たの?!」と驚かれつつ「日本人の若者がフライフィッシングを最近始めた」という事実をとても喜んでくれていた。コロナの影響に関わらず、最近日本人のフライフィッシャーでカナダまで来る人が少なかったらしい。

考えるより行動派の私は「英語勉強しながらフライフィッシングできるところに行きたい!!」とほとんど勢いで飛び込んだので、無知も無知、サーモンの種類やライセンスのことすら何も知らないまま出かけていた。

そんな私にMattさんは(きっと内心呆れていたと思うけど)とても親切にいろんなことを話してくれた。まずはFresh Water License一年分とフライをいくつか購入し、店を後にした。

Highwater Tackle @Lonsdale Avenue

Mattさんが手始めにと、Hatcheryの存在を教えてくれた。BC州には、魚を孵化して養殖して放流するHatcheryがたくさんあり、Hatchery fishはアブラビレがカットされているので釣ったときにも見分けがつくようになっている。

店があるNorth Vanエリアの中でも帰り道に行けそうなCapilano River Hatcheryに早速赴いた。慣れない道で降りるバス停を間違えたり、トレッキングコースから入ってしまったりして、初回から2時間も山道を歩いた。

Capilano Lake

やっとのことで到着すると、養殖場に研究所のようなものがくっついていて、サケマスに関する展示がされていた。なんとそこには愛しの日本語表記も。出口で判明するのだが、実はここは標津町と提携された、標津サーモン科学館との姉妹施設だったのだ。

隣に英語の看板もあった

Mattさんと話したことで自分の無知加減を自覚したことに加え、2時間知らない土地を彷徨ったことで、3日目にしてようやく「ひとり」を自覚した私は、子どものつもりでいちから釣りをはじめてみようという気持ちだった。そんなタイミングで出会った馴染みのある町の名前に心底勇気づけられたのを覚えている。

それから、館内では釣具からサケマスの生態、自然界に負担をかけない生活TIPSまでたくさんの展示物が掲示されていた。そしてここで見たような魚に関する掲示は、この先も川や森、トレッキングコースや公園の入り口、至るところで何度も目にすることになる。

カナダでの生活は驚くほど自然が身近で、森や川や風や気候や野生動物、自然のことを自らの体験をもって知っている人がとても多い。

パシフィックサーモンのライフサイクル
サーモンの名前、キャッチアンドリリースTips
英語・フランス語・日本語での説明
Hatcheryに帰ってきたサケの遡上が見られる

川のために自分ができるTips。「Healthy Streams」というのが良い。私は日本で「川をきれいに!」という標語しか見たことがなかったし、人間がきれいにしすぎて魚がいなくなってしまった場所も知っている。

描かれているライフスタイルも面白い

ここにあるHealthyな川のためのTipsは、“川の近くに住んでいるなら、水温のために木を切らず日陰を保とう”とか、“過剰な肥料は雑草や藻の過度な成長を促してしまい、魚や水生生物が必要な水中の酸素を減らすのであげすぎないでね”とか。「健康な川」を目的にするだけで些細な行動が変わってくるから面白い。そして水辺に住んでいなくたって、私たち人間の選択一つひとつが自然界に影響を及ぼすことが前提だ。

カルチャーショックにバチボコやられて、フライフィッシングに出会えた喜びを噛み締めたはじまりでした。

出会った人:Matt Suzukiさん

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